2024年09月05日
示談交渉の相手方に、弁護士が就いたとしも、安心できない
弁護士業務の中で、示談交渉というのは、結構ストレスがたまるものです。
特に、私の依頼者が加害者的立場にあり、示談交渉の相手方が被害者的立場にある場合、
相手方は、依頼者本人のみならず、私に対しても、悪感情を持っていることがあり、
私に対し、厳しい言葉を投げつけられることも多々あります。
このような場合、相手方に弁護士が代理人として就任すると、正直なところ、私は少しホッとするんです。
なぜなら、相手方に代理人弁護士が就けば、その後の示談交渉は、ある程度穏当なラインでの話ができ、示談成立の可能性が広がるという期待を持つことができるからです。
しかし、そうともいえないという経験をしたのです。
少し前の話になりますが、ある事件の示談交渉の相手方に代理人として弁護士が就いたのです。
その弁護士は、まだ経験が浅く、依頼者の言い分を、伝書鳩のように当方に伝えるのみで、
全く調整能力がないんです。調整しようと努力する姿勢すら全くないのです。
客観的にみれば不相当に高額な請求額であることはわかるはずなのに、
その高額な請求をずっと続けてくるのです。
そればかりか、私に対し、「実際いくらまでなら出せるのか」と言って、
こちらの腹積もりしている金額を明らかにするようにと、真顔で尋ねてくる始末です。
示談交渉というのは、交渉事です。当方の譲歩できる最大金額を示談交渉の相手方に開示することなどあり得ません。そんなこと当たり前のことであるのに、私はこの弁護士の対応にとても驚きました。
この件は結局、裁判になり、当方の提示額に近い金額で和解となり、
相手方にとっては実質敗訴に近い内容の和解でした。
事件解決までに、相当長期間かかりました。
このようなことから、裁判をしたことは、当方依頼者はもちろんのこと、相手方にとっても、メリットはないものでした。
弁護士は事件屋ではありません。事案の適切な解決のために、場合によっては依頼者を説得し、
早期に解決するという努力を怠らないということも、弁護士として、とても重要であると深く自覚した経験でした。